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2013年10月03日
ブライダルスナップの記憶 2
 『すっごい感動して泣きました!!』スタッフがよくそんなことを話してきていた。いつも答えは決まっている。『ちゃんと残したのか?』。
 そこに自分がカメラを持って立っている理由。それがわかるまで一人前と思えない。厳しいかもしれないがそうスタッフに教えて来た。ゲストじゃないんやし涙でピントが合わなかった、ブレた、アングルがださかった。そんなのあり得ない。
 私は一度だけ涙が溢れ、止まらず、ださい写真を撮った記憶がある。2003年頃だったと思う。車椅子の新郎だった。TROで挙式をされる二人に会って爽やかな笑顔を見せる二人に新郎は小さい頃からの車椅子なんだと思っていた。記念写真を撮る時、車椅子の新郎と優しい新婦の絵を描いていた時、新郎父が『わしが後ろにおるわ。』と息子より小さな背丈ですっぽり隠れることをアピールし、息子を立たせ、彼の後ろに消えた。大切な二人の写真に父親が支えて見えないけれど写っている。二人の笑顔は優しかった。『立って入場したい。頑張ってみる。』なんで?!単なる骨折?でも何か違う。集まりだして祝福の言葉をかけるゲストがみんな泣いている。
 入場で立つことはなかった。でもリハーサルは立って歩いていた。倒れそうになる新郎を父と新婦が何度も支える。挙式の間みんな泣いている。でも感動の気持ちが伝わってくる。
 理由を知ったのは一番二人に近い友人のスピーチだった。二人は出会い、付き合い、その後彼は大好きなスキー中に事故、背骨を損傷した。半身不随だった。流れているスライドには彼が笑ってスキーをしている姿、車椅子などない二人の写真。自分の世話をさせたくない彼は、別れる、と彼女に伝え、彼女は断り、この日を迎えていた。『夕焼けがきれいなんで、ロケに行きませんか?鴨川に。』
 人の気持ちは人が知り得ないところに、ある。目に見える姿は誰もがわかるが、本当の姿はどうすれば見えるのだろう。私がブライダルスナップの中に描きたかったのはそれだった。きれいさ、楽しさ、悲しさ、嬉しさ、寂しさ、強さ、弱さ。人、人、人が持つ物語をアルバムにしたい。それから14、5年ずっと追い求めてきた。でもあれほど涙が止まらなかった記憶がない。
 TROから鴨川に行く橋の上で、夕日を浴びた新婦がなぜか新郎をおいて、走る。私が後少し急げば夕日に間に合います!と無理なことを言ったせいだった。
 走る新婦を追いかけて、必死に車椅子を漕ぐ新郎。笑顔、笑顔、笑顔。なんかメイクさん、笑いなき?泣き笑い?
 私はださい写真を間違いなく、撮りました。恥ずかしいことですが私の記憶にあるのはまぎれもなく、最高の景色です。


 ブライダルの写真は、広告も当日も撮り手により全く違うものになります。だからこそちゃんと残す、ことが大切になる。残すものはきれいさだけではないもの、形のないものを残す。ずっと自分とスタッフに言い聞かせてきた言葉は、あの二人に尋ねてみたい気持ちになります。
 また、その時の写真はフィルムだったので残せていません。アップも出来ません。でもそんな一期一会の仕事に携わっていることを、データをコピー出来る、修整出来る、レタッチ出来る時代だからこそ、大切にしていきたいと思えるんです。