今回は珍しく日本のブライダルに欠かせない和装の振り付けについての話。27年ほど遡ります。京都のリーガロイヤルホテル(当時は京都グランドホテルでした)で結婚式の写真撮影のアルバイトを始めた私は何故か和装に魅力を感じ、和装の美しい型というものを長い年月追い求めることになりました。師が言うには立木写真館と名前は忘れましたが東京の写真館の完成された型をミックスしたそうですが、確かに昔バイブルのように見ていた全国の振り付けの解説と絵コンテが一覧されていた本にはそれぞれに特徴があり、興味が尽きなかったことを思い出します。
着付けの講習会にも行き、当時の先輩からの指導もあり、我ながら完成された型を付ける事が出来るようになりました。ある意味特殊技術なのでかなりマニアックですが、長い、遅い、汚ない和装の振り付けは被写体の表情を損ねます。型はそれぞれに進化した形があり、理論もあるため変化させる必要はありませんが、早さについて私の経験から一分半で付ける実例を紹介します。
因みに私の会社の和装未経験のフォトグラファーの女性が一ヶ月で78秒で型を付けました。各部名称、行程を覚えます。クリップは六個で止める座標を覚えます。完成型の絵を書いて覚えます。後は呪文のように座標を口にしながら一個13秒で六個のクリップを止めていきます。これで78秒です。残りの12秒で確認と手直しをすれば一分半です。クリップの座標が正確であればあるほど動かれても崩れない型になります。お客様が動かれたから、着付けが悪かったから、それは遅さの言い訳であり、動かれるから、体型も着付ける方も違うから崩れない型を正確に付けていくものです。
今回の話のコアはここにあります。予測行動の大切さです。パニックにならないためにパニックを予測し、回避をする。パニックにならないためにパニック状態をわざと作り出し、練習で経験をする。座標は二、三ヶ月もすれば必ずズレはじめます。それは型の崩れと直結しています。和装がなくても目を閉じてイメージトレーニングで78秒で付ける事が出来れば上達します。
余談ですが私の和装の型の追い求めた姿は、すべての線は並行ラインと垂直ラインで構成され、その線は緩やかな末広がりのカーブを描き、たくさんの重ね合わせの和装姿が細く型付けられるものでした。
写真は日々変わり、進んで行くものですが、受け継がれるもの、古き良きものも忘れずにいたいと思います。